外国人の雇い方
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最終更新日:2015/09/18
合同会社運営の知識
グローバル化と人口減少に直面する日本にとって、外国人労働力の活用は必要不可欠になってきています。九州に住む外国の方も多くなってきましたね。今回は、外国人の雇い方について簡単にご説明します。
まず、大前提になりますが、従業員として雇うことができる外国人は、適法な在留資格(ビザ)を持っている方に限られます。ビザとは、外国人が日本に在留する間、一定の活動ができる、あるいは、一定の身分または地位を有する者としての活動ができることを示す法的資格のことで、就労系ビザと身分系ビザに大別されます。ビザを取得するためには、法務省管轄の入国管理局に申請する必要があります。
就労系ビザ
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、文化活動、短期滞在、留学、就学、研修、家族滞在、特定活動
身分系ビザ
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者、定住者
外国人の雇用には、①既に日本で暮らしている外国人を雇う場合と、②海外にいる外国人を雇う場合があります。①の場合、身分系ビザを持つ外国人は業務内容に制限はありませんが、就労系ビザを持つ外国人は業務内容が限定されますので必ずビザを確認しましょう。たとえば、教育のビザを持つ外国人をコックとして雇うことはできません。また、在留期限の確認も必須です。
一方、②の場合は、海外から呼び寄せるために、就労系ビザを申請する必要があります。日本の就労系ビザの取得が認められる基準は非常に厳しく、例えば、レストランのコックの場合、原則10年以上の日本において特殊な料理に関する実務経験が必要になります。日本料理など日本において特殊な料理といえない料理の実務経験では、残念ながらビザを取得できません。また、システムエンジニアの場合、必要な技術に関連する科目を専攻して大学を卒業、もしくは同等以上の教育を受けている、または通算10年以上の実務経験を有していることが条件になります。
ビザが認められるための基準を満たしてはじめて、以下のような提出書類を揃えて入国管理局にビザの申請をすることになります。
提出書類
在留資格認定証明書交付申請書、雇用主の身分証明書の写し、申請理由書、職務内容説明書、雇用契約書の写し、会社の登記簿謄本、直近の損益計算書、前年分の従業員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し等
書類を提出すると入国管理局で審査が行われますが、審査結果には異議申し立てができないため、慎重に準備する必要があります。入国管理局では職種ごとの平均賃金を算出しており、平均以下の給与では日本国内の生活が困難であるとみなされて不交付になる場合もあります。賃金に関して、外国人も日本人労働者と同様に扱う必要があります。
そして、無事ビザの申請がおりると、会社では、入国管理局への再入国申請手続(在留中の外国人が出国して再度入国できるようにする手続)と外国人登録の指導(携帯する外国人登録証を区役等で発行する手続)を行い、その他通常の入社手続きを行います。
なお、外国人を雇用する場合は、ハローワークへの届出が必要になりますが、不明な点があれば、外国人雇用管理アドバイザー制度を利用することもできます。また、社会保険・労働保険は原則国籍を問わず同様の取り扱いになりますが、年金が掛け捨てになってしまうことを防止するために、脱退一時金制度があります。脱退一時金制度は、短期間日本に在住し、日本の年金制度(国民年金・厚生年金など)に6ヵ月間以上加入して帰国する外国人に対して、払い込んだ保険料の額に応じて一定額を払い戻す制度をいいます。ちなみに、健康保険に関しては、中小企業の協会けんぽの場合、海外に住んでいる外国人労働者の親族も被扶養者として対象となります。
さて、税務上は、外国人従業員に対する源泉徴収(所得税・住民税)に関して、居住者と非居住者・永住者と非永住者の区別により課税税率が異なるため注意が必要です。所得税法上は、日本に住所がある、または現在まで引き続き1年以上住所がある者を居住者、それ以外を非居住者といいます。また、居住者のち、日本国籍を保持しておらず、過去10年間日本国内に住所または居所を有していた期間が合計5年以下である者を非永住者、それ以外を永住者といいます。
具体的には、給与計算時に控除する所得税の税率は、非居住者の場合、日本国内で支払われた所得の原則20%になります。ただし、外国人の出身国である国が日本と別途租税条約を締結している場合(米国など)は、短期滞在者に対して課税を免除する制度があります。また、居住者の場合、永住者はすべての所得に課税されるのに対して、非永住者は給与など日本国内で支払われた報酬および親会社などから賃金として送金された所得に課税されます。そして、非居住者の場合、住民税は課税されません。
単に外国人を雇うというと手続きが面倒だという印象があるかもしれませんが、ビザをすでに取得している場合やビザ取得後の手続きは通常の雇用手続とそんなに変わりません。会社に新たな風を吹き込んでくれる有能な人材は国籍を問わず積極的に採用してみましょう。
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